圧力のお話(CO2添加やエアレーションで知ってるほうがいいこと)
水草を水槽で鑑賞するうえで快適に、綺麗に育成する方法としてCO2(二酸化炭素)
を一定量添加したり、魚などの成体のためにエアレーション(ブクブクってやつ)を
行ったり、とかく「気体」を取り扱う機会が多いアクアリウムの世界。考えてみれば
飼育水も含めて「流体」を扱うこと自体がアクアリウムの本質なのかもしれません。
ここでのお話は知らなくても水槽の維持に支障はないかもいれませんが
Desk Top AQUAのホームページに来ていただいたみなさんには是非知っていてほしいお話です。
■水槽環境で考える圧力の話
たとえばCO2ボンベを買ってきて、表示に「内圧0.7MPa」とか書いてあったとします。
「0.7MPaってなに?」
感覚的に「内圧0.7MPaそのままのCO2を水槽に突っ込むと大変なことになる」と想像したとします。
その想像はあってるのでしょうか?単位を含めて圧力の大きさを整理してみたいと思います。
みなさんが普段生活してるのは大気圧と言いますよね。1気圧と言う場合もあります。
細かい条件は抜きにして基本的な換算を表示します。
・1気圧=1.033kgf/cm2=101330Pa=1013.3hPa=0.10133MPa
ややこしいですよね。蛇足ですが気圧(atm)は標準大気圧を1としているのに対して
Paは絶対真空を0としてます。基準が違うのがそもそもよくないと思います。
本題に戻りますが大まかに言うと0.7MPaとは大気圧の7倍圧です。「大変なことになる」と
の想像は間違ってませんでした。適量添加のためには圧力を調整して低い圧力にしなければなりませんが
次に考えなければいけないのはだいたいどのくらいまで低くすればいいのでしょう?
水槽底での水圧を考えてみます。水圧を求めるのは簡単で水面からの深さをa cmとすると、
その場所の水圧はa gf/cm2と計算出来ます。例えば水深20cmのところの水圧は20gf/cm2。
それに大気圧の1.033kgf/cm2が単純に加算されますので1.053kgf/cm2となります。
(kgf/cm2をMPaに換算するには98.0665をかけて、メガだから1000で割る)
つまり、20cmの水深でCO2を供給しようと考えると1.053kg/cm2(0.1033MPa)以上の圧力
が最低限必要とわかります。実際はバブルカウンターとかいろいろな器具を中継したり管路が
長かったり耐圧チューブを使わなかったり、抵抗など損失等々がかなりありますので
現実の供給圧力は0.2〜0.3MPaあたりに落ち着くと考えられます。
■圧力計の話
例えば車や自転車のタイヤに空気を入れる場合、圧力計を使って規定圧まで空気を入れるのですが
車などで0.2〜0.25MPa(慣例でしょうか?なぜかタイヤ空気圧表示はSI単位でなくkg/cm2が多いです)が普通ですよね。
規定値0.2MPaの場合、圧縮空気を入れる前のタイヤは大気圧である0.1MPaを「示してなければおかしい」はずですが
実際、空気を入れてないタイヤを計っても圧力計の針は動きません。
そう、「圧力計の0は0MPaじゃない」のです。
一般に生活していると大気圧を0とするほうが感覚的に理解しやすいのです。
これをゲージ圧といい、大気圧をゼロとして圧力を表す方法です。
タイヤにゲージ圧で0.2MPa入れた場合、実際は0.30133MPaの圧縮空気を入れてるのです。
蛇足ですが、大気圧より高い圧力を正圧、低い圧力を負圧といいます。
お気づきのように、大気圧は、土地の高度、天候等により変動しますので、
ゲージ圧は本当の0MPa(絶対真空)に対しては非常にいい加減で曖昧な計測表示と言えますが一般に使うには
感覚に合っているので都合がいいのです。
余談ですが化学計算等ではゲージ圧はあまり使われず絶対真空をゼロとして圧力を表す方法を好んで使用します。
絶対圧といい、計算で考える場合は逆にこのほうが理解しやすいからです。上で話した「 水槽環境で考える圧力の話」はまさにそうですね。
表示する場合一応、ゲージ圧と区別するために単位の後ろに“abs”(例えばMPaabs)と書きますが
書いてない説明文なども多いので「ゲージ圧と絶対圧は違う」程度は覚えておいたほうがいいと思います。