■電磁弁の使い方(仕組みと種類)
ソレノイドバルブ(電磁弁)はタイマーと組み合わせることによりCO2添加時間を自動で制御する
時に必要な機器です。字のとおりソレノイド(電磁石)によりバルブ(弁)を開閉する機器です。CO2添加を主題に
お話してますのでおおざっぱに、直動式と間接式に分けられます。
直動式
CO2添加システムには通常、2ポート(入り口と出口の2箇所の穴だけある)ソレノイドバルブが一般的ですが
この絵は3ポート(3つの穴)ソレノイドバルブです。非通電時はA(2)とR(3)が開通していますがDの電磁石に通電すると
真ん中の軸(これが「弁」)を電磁石が「直接」押して切り替え、A(1)はP(1)と開通します。
(ちなみにPはプレッシャー、一次圧とか元圧用の穴って意味です。Rはリリーフの意。排気の穴って意味。
Aは作動の穴で3ポート以上、4とか5ポートになるとA、Bと作動の穴は複数になります。)
間接式(エアオペレート)
この絵も3ポート(3つの穴)ソレノイドバルブです。動作は直動式と同じですが通電するとF電磁石が
別の小さな空気穴を開通させ、Pから入った(本来、通り抜けるだけのはずの)圧縮空気の圧力で真ん中の軸を
押して切り替えます。
ですからデメリットといては弁を押して動かせられるだけの圧力を持った空気圧の供給が第一条件になります。
多くの商品は最低作動圧が0.15MPa以上を求めていますのでその近傍の低圧では不安定になります。
メリットとしては直動式より小さな電磁石(消費電力が小さく小型化できる)でより大きな空気の通り道
(有効断面積)を制御出来るので元圧が安定して0.2MPa以上ある場合、主流はこちらです。
さて、低圧であるCO2添加で考えますと直動式を選択するのが一般的でしょう。実際、私の知る限り製品としての
「CO2添加用」ソレノイドバルブ(電磁弁)はすべて直動式です。Desk Top AQUAでも直動式の「DTAソレノイドバルブS2」を
発売してます。
ではCO2添加には間接式は最低作動差圧の問題がある限り本当に使えないのでしょうか?
毎日8時間ほど通電していることを考えると発熱量を抑えられることも含めて省電力なソレノイドバルブは
「エコ」とか「省エネ」などの意味以上に魅力的です。
またCO2添加による流量は微々たるものですから当然小型電磁弁を選択しますが小型であればあるほど、
配管部より倍以上大きい電磁石が縦に「デーン」とそびえてるあの不恰好さを間接式なら(多少は)
解消出来るのもデザイン的に大きな魅力と思います。
Desk Top AQUAでは仕様を精査検討。やはり間接式のメリットをみなさんが選択出来るようにしたい。と考え、
作動差圧0.01MPa以下(約100gf/cm2)で可動出来るDTAソレノイドバルブS1も企画選定しました。
こちらもただいま発売中です。
後半は半分宣伝になってしまいましたが乞うご期待です。
■電磁弁の使い方(電源と発熱)
仕組みが理解出来たところでこの一連のコラムで一番のテーマであるソレノイドバルブ(電磁弁)の「発熱」について
理解してもらいたいと思います。
ソレノイドバルブは流量等の調整機能はありません。閉じるか開くかだけ。2ポート電磁弁の場合、通常は通電時に開きます。
(ノーマルクローズ、N.Cと言います)電源はDC24Vタイプが産業用として主流ですがAC100Vタイプも一般的です。
CO2添加を目的としたソレノイドバルブを選定する場合、長時間(6〜12時間/1日)の連続通電になりますので
「連続運転に耐えるか」と「連続運転による発熱量は適正か」の2点が非常に問題になります。
連続運転について
Desk Top AQUAの知る限り「水槽内CO2添加専用設計」ソレノイドバルブは国内メーカー品の中にありません。
世に出ている「CO2添加電磁弁」は全て産業用として設計開発されたソレノイドバルブを転用してると思います。
そして多くのソレノイドバルブは長時間の連続通電をあまり想定して開発されてません。
代表的な空圧メーカー、SMCのカタログを見てみましょう。
(オールエアシステム前付43P)
「安全上のご注意」の「共通事項」の「選定」内Aを抜粋します。
A長期連続通電
・バルブを長期連続的に通電すると、コイルの発熱による温度上昇で電磁弁の性能や近接する周辺機器に
悪影響を与える場合があります。このため長期間連続的に通電する場合、または1日当たりの通電時間が非通電時間より
長くなる場合には、SYシリーズのDC仕様および省電力形、またはVQシリーズの低ワット仕様ならびに長期通電タイプを
別途用意しているバルブを使用してください。-後略-
(注:SY、VQシリーズとはSMCの商品名です。長期通電タイプは小型電磁弁ではラインナップにありません)
CKD(CO2添加用でよく見るメーカー)では
巻頭66P「設計・選定時」の「4.耐久性」
連続通電での使用は電磁弁の性能劣化を促進することがありますので、お問い合せください。
連続通電で使用される場合は、DC電圧仕様およびフッ素ゴム仕様品を使用して下さい。
巻頭67P「6.使用方法」
--前略-- 以下の使用法でも連続通電と同様にご注意ください。
・間欠通電において通電時間が非通電時間を上回る場合
・間欠通電において1回の通電が30minを超える場合
設置の際には放熱を考慮してください。連続通電でご使用の場合は、ご相談ください。
つまり
「30分を超える長時間連続通電は発熱で高温になるからDCタイプとか省電力タイプとかの
発熱しにくいタイプを使いなさい。」と言っています。
連続通電が問題なのではなく、発熱が問題なのです。
Desk Top AQUAは空圧回路設計に豊富な経験を持ってます。断言します。
まず、第一条件としてこの「発熱量を抑える」使い方もしくは機器選定をしまければ
ソレノイドバルブを使うことは出来ません。
では具体的に何度が「使用に耐える」温度なのでしょう?
実際にDesk Top AQUAでは各電磁石部を連続通電して1時間後に表面温度の測定をしてみました。
@(SMC推奨)DC24V、 SYシリーズ用(間接式)
A(SMC製) DC12V、 小型直動用
B(SMC製) AC100V、 VZシリーズ用(直動式)
左:DC24V仕様 中央:DC12V仕様 右:AC100V仕様
最高温度は(ピーク時に写真撮れなかったのですが)DC24Vが最高36.7℃、DC12Vが最高47.1℃、AC100Vが最高52.3℃。
2月15日、室温19℃測定ですので夏ならもう少し上乗せがあるでしょう。
やはり電磁石が小さくて省電力に長けているDC仕様SYは最低温度でした。
では、測定値最高温度52℃とはどんな温度でしょう?
水槽周辺にも多くあるPET樹脂、塩ビ樹脂のそれぞれの連続使用許容温度は-15〜55℃、-30〜60℃ですので
限界近傍の温度では変形、熔解の危険はかなりあると考えられます。
また、この実験に使用したVZシリーズのカタログ上での許容温度範囲は-10〜50℃。
CKDはカタログ巻頭で「高温ではワンタッチ継手使用ダメ」とあります。
接続する耐圧チューブも素材はポリウレタンで許容使用温度範囲は-20〜60℃です。
カタログ値はすべて安全率をかけた数値だと好意的に考えてもほとんど全ての機器がメーカー許容値近傍では
「保証外」と判定されてもおかしくないです。というかそれ以前に、火傷する可能性がある温度が52℃です。
判定として、AC100V仕様はこのままではNGです。
では次に高い47℃ならどうでしょう?
機械特性上は範囲内に収まっており各メーカーの「DC仕様を使え」との条件にも合致してます。
ですが47℃とは火傷はせずとも10秒程度の時間すら触ってられません。
判定として、DC仕様でもこのままではNGです。
どのくらいがOKかというと、感覚的には最高でせいぜい42℃。40℃以下が水槽周辺で使用に耐える限界かと考えます。
(あくまでもDesk Top AQUAの内規温度設定です)
ソレノイドバルブの温度は低いほうがいい。
当たり前のような言葉ですがこのコラムで一番言いたいのはやはりこのことなのです。
コンセントをつければ動くと考え、性能が分からない産業用をヤフオクで購入し、高温に悩まされて相談
いただいた方が過去にいました。このコラムを書いたきっかけなのです。
自作などでAC100V仕様ソレノイドバルブに電源コードをハンダ付けしただけのものをご使用の方、いままで
問題がなかったとしたら運が良かっただけと思います。すぐに温度を下げる対策をしてください。
具体的には42℃以下にして周辺機器とは5cm以上離すことです。
買い換え?もったいない気もします。電気機器用の放熱板(ヒートシンク)を追加してみたり
電動ファンで冷却したり、42℃以下になるようにしてください。 測り方ですが、てんぷら油を
計る温度計なら測定部を点接触でなく線接触させる感じでかなり正確に測れますし、
水槽用の温度計の測定部と測定面を少量の油粘土でつないでも測れますので工夫してみてください。
最後に。
ソレノイドバルブの種類は用途によって本当に細分化されてます。価格も含めてベストな機種選定は専門家でなければ
無理なのです。CO2添加とは世にあるソレノイドバルブの仕様的にかなり過酷なものということを理解してください。
さて、非常に稚拙な文章のこのコラムを我慢してここまで読んでいただいた方には感謝の意を込めて
「この空圧機器って、こんな自作物で使える?」などなど、Desk Top AQUAにご相談もらえればその選定での可否判定の
助言をさせていただきます。(もちろん無料です(^^))「お問い合わせ」からご相談ください!
もちろん新規で購入の際には新発売のDTAソレノイドバルブ(DC仕様電磁弁)Sシリーズで御願いします!